マイホームで快適に過ごすために重要なことは、建築地の日射を考慮することと、断熱、換気、気密の性能です。この4つをバランスよく設計することにより、快適でしかもランニングコストのかからない家を作ることができます。
前号でお話しした換気も気密性が低いとその効果は下がります。第1種の換気システムを設置しても、すきま風があるような家では、換気量を確保できないのです。

気密性能に明確な基準を設けたのは、1999年(平成11年)の次世代省エネ基準です。1997年の京都議定書(第3回気候変動枠組条約締約国会議)の対応のためだといわれています。そこでは高気密な住宅は当時の基準でC値が5.0以下のものとされています。今の住宅性能表示制度の省エネ等級4です。C値5.0はかなり緩い基準と言えます。C値5.0は、木造の土壁の家程度で、ボードで施工するとC値は3.0程度になります。
ちなみに、C値とは、床面積1平方メートルあたりの隙間面積を表す値で、値が小さいほど気密性が高いということになります。つまり、床面積100平方メートル(約30坪)の家で、C値が3.0の場合、建物全体の隙間を集めると300平方センチ(ハガキ2枚ほど)の穴があるということになります(住宅の床面積の全国平均は約129.3平方メートル)。C値が3.0であるとかなり大きな隙間が家にあるということがわかります。こんな隙間があっては前号で書いたような換気を計画通りに行うことはできないことは簡単にイメージしていただけると思います。計画換気を行うには、C値は、1.0以下でないといけないといわれています。
空気を入れたいこところから、空気が入らず「隙間」から空気が入ってしまうと、居室全体の空気は入れ替わりません。焼肉などをリビングでしてもなかなかにおいが消えないことになります。布団圧縮袋は、気密性の高い圧縮袋に布団を入れて一カ所から空気を抜き、布団を圧縮します。袋のどこかに穴が開いていたら布団は圧縮されません。これと少し似ています。

実は、この気密値のC値は2013年(平成21年)の省エネルギー基準の改正で削除されました。なぜ、削除されたかについては色々な憶測がありますがここでは割愛します。「C値 基準が外された理由」などで、検索していただければ、色々な記事やブログが検索にかかりますのでそちらをお読みください。
ピースホームでは、費用負担(10万円程度)が伴いますが、施主様のご希望があればC値の計測を行っております。ピースホームが施工した住宅のC値は、概ね0.6前後です。
この気密性は、先ほどの換気性能への効果以外にも様々なメリットを持っています。

冷暖房効率

簡単にイメージしていただけると思いますが、気密性が上がると冷暖房効率は格段に上がります。以前の号で書いたように高断熱の窓やガラスを使い、さらには断熱性能が高い玄関ドアを使っても、隙間風があれば冷房も暖房も効きません。保温性の高い水筒の栓をきっちり閉めないといけないのと同じです。

ヒートショックの予防

冬になるとよく取りざたされるヒートショックですが、日本では交通事故の約2倍の方が、ヒートショックが原因で亡くなっています。ヒートショックとは、急激な温度変化により躰に悪影響(心筋梗塞、脳梗塞など)がもたらされる現象です。寒いトイレや浴室でのヒートショックは高齢者の突然死の原因になっています。しかし、若い人は大丈夫というわけではありません。寒い空間と温かい空間を行き来すると血管が縮まったり緩んだりします。心臓に負担がかかっていることは間違いないのです。
ヒートショックの対策として、トイレや浴室・脱衣所などにヒーターを設置される方がいらっしゃいますが、ヒーターでは「採暖」にはなりますが、その空間全体の温度を保つ「暖房」にはならないことがほとんどです。「採暖」は聞きなれない言葉ですが、屋外の焚火やいろりをイメージしていだけるとよいと思います。寒さの中にあって「暖かさを感じる」ものです。伝統的な日本家屋でのストーブやこたつも採暖ということになります。
話が逸れましたが、採暖だけでは、ヒートショックの予防にはなりません。気密性の高い住宅では、隙間がないため家全体の空間で、ある程度一定の温度を保つことができます。

遮音性能

高気密で高断熱の住宅は遮音性にも優れています。ピースホームの家に建て替えられた施主さんの中には、「戸外の音が気にならなくなった」や「雨音も注意しないと気づかないくらいになった」などとおっしゃる方がいらっしゃいます。
居住空間の中への音の侵入を防ぐには、遮音と吸音が必要になります。もちろん、音楽教室のような遮音性を求める場合は、専用の遮音性能の施行が必要ですが、高気密高断熱の住宅は、戸外からの音を外壁が遮断し、遮音できなかった音は壁の断熱材が吸収するので一般の住宅には十分な遮音性能を持っています。ピースピースホームでは遮音・防音性のも高いセルロースファイバーを用いたデコスドライ工法を採用しております(詳しくはこちら)。
音は空気の振動なので、住宅気密性が高いと空気が外に漏れないので、室内の音も外に漏れにくいということになります。

繰り返しになりますが、快適な家に暮らすには、断熱・気密・換気の性能は必須要件で、日射を考慮した設計(建築地の太陽の動き検討した設計)が重要です。ただし、やはりバランスが重要です。今回の気密性に関しても、その部分だけに着目して設計するとやはりどこか住みにくい家となってしまいます。たとへば、高気密だと計画通りに換気も行えますが、冬季だと給気口から冷たい空気が入ってくることになります。ピースホームが第1種のダクト式熱交換気システムを標準仕様にしているのはそのためです(詳しくはこちら)。

次回は、「ピースホームの上手な住まい方マニュアル」を開始しようかと思案中です。ご期待ください。